Office the Globe

ChatGPTと翻訳

再度ChatGPTの話をする。

翻訳者プラットフォームのProZ主催のウェビナー「Power Up Your Translation Work with ChatGPT 2.0 (ChatGPTを使用して翻訳作業をパワーアップする 第2回)」が5月30日に行われた。

ChatGPTは大規模言語モデルであり、NMT(ニューラル機械翻訳)と同様にそれぞれ次の単語を予測することで動いている。GPT-3が、1750億パラメータ、GPT-4が、1兆パラメータと格段に言語モデルが大きくなっており、翻訳に使用されていた従来のNMTに比べ格段に性能が上がっているとのことであった。

例えば医薬の翻訳を依頼する際、ヘルシンキ宣言の用語を使用して翻訳してほしいなどといえば、その用語を当てはめて翻訳してくれる。一般の読者向けにいいかえてほしいといえば、平易な言葉で書き直してくれるとのこと。

一方、従来からわかっているように、ChatGPTは完全ではない。間違った情報が含まれるし、過去のデータに基づくモデルであるため、現在のことは答えられない。翻訳とは離れるが、「今日の東京の天気は?」と聞くと、「データは過去のものであるため、即時性のある情報にはこたえられません。天気予報のウェブサイトを参照してください。」などと返してくる。

つまり、機械翻訳がそうであったように、ChatGPTもとても優秀なツールであり、人がどう使用するかによって翻訳スピードや翻訳周りの作業が軽減される。ウェビナーで紹介されていたのは、用語集の作成の下準備、時制の変更、用語の一部変更など、人手がかかっていたことの手間が軽減されるということだった。

ここでツールを使用する人の力量が必要になる。自分が何をしたいのか、ChatGPTに何を期待するのか、それをどうChatGPTに伝えるかというPrompt(プロンプト)が大切になる。これまでデータを得ようとする際に必要だったコードが不要というのはプログラム言語を介さない人にとって大変ありがたい。一方で問いを立てる力、自分が欲するものを言語化する力が必須であり、それを相手に明確に伝える力が必要である。これこそがなかなか難しいことかもしれない。 興味のある方は、6月にBootCamp ChatGPT for Translators: A Four-Week Comprehensive AI Bootcamp (proz.com) が行われようだ。

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